• 第8話 暁の“ろうさん”を尋ねて

    ~2013.01.21(月)~ 謹賀新年。 新年仕事始めは一月七日、例年になくお正月休みが続きお陰様で気ままにゆっくりと自宅で過ごすことが出来た。元日の初詣は、毎年、散歩と運動を兼ねて愛犬ネオと一緒だったが、残念ながら相棒を亡くした今年は何故か?神妙な気分に襲われ“何事も己れ一人...

    2013.01.21, 月曜の朝

  • 第6話 故・徳本英雄君を偲ぶ~不思議な胡蝶蘭に寄せて~

    ~2012.11.12(月)~  本年五月、連休を利用して約二十年間住み慣れた本社の事務所を移転した。社員六十数名からなる大所帯の引っ越しは、やたらと繁忙な準備期間を費やした上に多大な費用が嵩み目の眩む思いがした。来年六月六日に創立30周年を迎える、これを節目に更なる社業発展を期...

    2012.11.12, 月曜の朝

  • 第5話 少年時代(最終話)

    ~2012.10.08(月)~  時々、母が職員室へ呼び出された。  店の仕事で忙しいにもかかわらず、その度に朝からわざわざよそ着に着替えて身体を小さく折り曲げ担任のN先生を尋ねた。私はその哀れで悲しい姿を物陰に隠れては平然と見て見ぬふりを装い、時には燻る反抗心を露骨な態度に表し...

    2012.10.22, 月曜の朝

  • 第5話 少年時代(七)

    ~2012.9.24(月)~  私はしばしば放課後を待って街に出ると“米兵退治”の同志を探し求めた。  小学校二年の春、ビー玉遊びで隣の町内まで足を延ばした時にはじめてさぶちゃんと出逢った。ゲームに入りたくて“場”を覗くと見知らぬ上級生が一人勝ちしている、学生帽の校章を見ると同じ...

    2012.09.24, 月曜の朝

  • 第5話 少年時代(六)

    ~2012.8.20(月)~  まさしく魔物が現れた一瞬、深緑色に包まれた川底が今にも私を呑み込もうと大きな口を開けて待っている。少しばかり泳ぎに憶えがあるからと言って決して敵う相手ではなく、行く手は閉された暗闇の中にあった。本意でないが米兵に“助け”を求めても既に上流に遠ざかっ...

    2012.08.27, 月曜の朝

  • 第5話 少年時代(五)

    ~2012.7.2(月)~        私は唖然として葦の葉を背にして波打ち際に立ちすくんだ。  ついに出た米兵の切り札!“川底に呑まれる”不気味な恐怖が暗闇の中からおどおどしく顔を持ち上げた。正々堂々たる“決闘”とは、勝敗を問わず戦う者同士の勇気と技量の檄突であるはず、しか...

    2012.07.16, 月曜の朝

  • 第5話 少年時代(四)

    ~2012.6.18(月)~  少年の心は目に見えない何者かの大きな力に引き上げられ宙に浮ぶ気分に酔っていた。  相変わらず米兵は覚束ない足どりで追い掛けて来たので私は作戦通り逃げの一手で押し通し相手が疲れるのを待っていた。ところが、敵が酔っていると知ってつい気が緩み橋の上で見掛...

    2012.06.18, 月曜の朝

  • 第5話 少年時代(三)

      ~2012.5.7(月)~  二人とも堂々と真正面で向き合った。 敵が本気で身構えるとさすがに隙がなくてまったく手が出せず、それは何人も寄せ付けない恐怖に満ちたプレッシャーだった。もちろん、咄嗟に思い着いた「蹴り」や「肩すかし」など通ずるはずもなく、蛇に睨まれた蛙と同じで容赦...

    2012.05.14, 月曜の朝

  • 第5話 少年時代(二)

    ~2012.4.9(月)~  私は放り投げられた勢いに乗じて素早く身をかわし草むらの中に逃れた。背後は川べりに生えた葦が茂りかろうじてその陰に隠れることが出来た。川面を渡る冷たい風が葦の葉を揺らしカサカサと囁く声と浅瀬に寄せるさざ波の音以外には何も聞こえず、何事もなかったように静...

    2012.04.09, 月曜の朝

  • 第5話 少年時代(一)

      ~2012.3.12(月)~  昭和20年、私は敗戦が迫る苫小牧で生まれた。・・腹を空かせてピイピイと泣く赤子のお前を抱きながら凄まじい艦砲射撃の中をあっちこっちと死にもの狂いで逃げ廻り・・誰ひとり頼らずにふたりともよく助かったものだよ!・・と母からよく聞かされた。また、・・...

    2012.03.12, 月曜の朝