• 第15話 (最終回)白蛇伝~「コムカラ峠」外伝~

    ~2014.10.27(月)~  翌朝、祭壇の左右には紙で作られた金と銀の蓮華が左右を装い、正面の上段には黒いリボンに飾られた遺影、中段には位牌と一膳ご飯が供えられた。下段には物々しい香炉と古びた一対の燭台、この二つの仏具は我が家に代々伝わるもので苫小牧の叔父の話によれば亘理藩...

    2014.10.27, 月曜の朝, コムカラ峠

  • 第15話 (八)白蛇伝~「コムカラ峠」外伝~

    ~2014.09.22(月)~  その日、真夜中に雪ちゃんを看護している母から電話が入り、いつも連絡係を務めていた幸ちゃんがいち早くこれを受け取った。日頃から慌しい母の様子を陰で伺っていた彼女はこの日が迫っていることを察知して夜中でも待機していたらしい。直ぐに私の部屋の戸を叩き...

    2014.09.22, 月曜の朝, コムカラ峠

  • 第15話 (七)白蛇伝~「コムカラ峠」外伝~

    ~2014.07.14(月)~  猛暑が続くある土曜日の夕方、ちょうど私が外から帰ったその時、突然、雪ちゃんが台所で血を吐いて倒れた。血相を変えた幸ちゃんと裏玄関で鉢合わせになったが、彼女は振り向きもせず「お医者さん!」と叫んだ切りで髪を振り乱して表通りへ飛び出して行った。台所で...

    2014.07.14, 月曜の朝, コムカラ峠

  • 第15話 (六)白蛇伝~「コムカラ峠」外伝~

    ~2014.05.26(月)~  “洗い場“の突端から竿を投げ入れるとウグイやカジカが釣れ、時にはマスやヤマメが掛かることもあった。川の深みにはヤツメウナギが群がり、春になると無数の稚魚たちが岸辺で這い廻っていた。親子共に黒々と不気味な群れを作るこの魚たちは、海に棲むウツボと同じ...

    2014.05.26, 月曜の朝, コムカラ峠

  • 第15話 (五)白蛇伝~「コムカラ峠」外伝~

    ~2014.03.10(月)~  その後、学校給食で牛乳とパンが出ることになったので“山羊の乳”を貰いに行かずとも済むことになった。母からは続けなさい!と頻りに奨められたが、雪ちゃんのことを思うと、老婆に会わなければ“秘密”が守れるので直ぐにでも下駄屋へ行くのを止めたい気持ちで一...

    2014.03.10, 月曜の朝, コムカラ峠

  • 第15話 (四)白蛇伝~「コムカラ峠」外伝~

    ~2014.01.27(月)~  その後も母の言い付けを守り日曜日の朝には“山羊の乳”を貰いに下駄屋に通った。  しかし、あの吹雪の朝を最後にして雪ちゃんが姿を見せることはなかった。彼女の近況を老婆から聞けるはずもないまま時が過ぎて行くうちにすっかり忘れてしまった。街中では相変わ...

    2014.01.27, 月曜の朝, コムカラ峠

  • 第15話 (三)白蛇伝~「コムカラ峠」外伝~

    ~2013.11.11(月)~  その年が明けて間もない吹雪の朝のことであった。  苫小牧を出る時に叔母から貰った帽子を被りいつもの通り下駄屋に向かった。防寒用の帽子は毛糸で編んだマフラーを頭巾に縫い合わせた簡単なものだが、頭からすっぽりて被って顎のところで両端を結べば襟巻にもな...

    2013.11.11, 月曜の朝, コムカラ峠

  • 第15話 (二)白蛇伝~「コムカラ峠」外伝~

    ~2013.10.14(月)~  毎週、日曜日の朝が来ると母から風呂敷に包んだ空のビールビン2本を持たされた。  私はそれを背中に括り付け徒歩で30分ほど掛かる下駄屋に向かった。裏玄関から表通りに出て隣の写真屋を右に折れ、川べりに並ぶ屋台に沿って行くと弾丸道路(旧国道36号線)に...

    2013.10.14, 月曜の朝, コムカラ峠

  • 第15話 (一)白蛇伝~「コムカラ峠」外伝~

    ~2013.09.02(月)~  平成十五年春、知人の薦めで応募した拙文がはからずも「第23回北海道ノンフィクション大賞」を受賞した。「コムカラ峠」と題した受賞作品の舞台は、昭和二十六年に勃発した朝鮮戦争を契機に米軍基地に豹変した千歳の街、作者が出逢った人々や見聞きした様々な出来...

    2013.09.02, 月曜の朝, コムカラ峠